騒音は何デシベルで訴えられる?目安の基準値と裁判所の見方

YouTube動画版はこちら記事の内容を動画でも解説しています

「上の階の足音を測ったら60デシベルあった。これは訴えられるのだろうか」
「何デシベルを超えたら違法になるのか、はっきりした数字を知りたい」

このように感じている方は多いのですが、騒音は何デシベルで訴えられるのかという問いに、法律上の明確な線はありません。数字だけを頼りに動くと、基準を超えているのに相手にされない、訴えたのに認められないという結果になりかねません。

この記事では、目安となる基準値、裁判所が数字以外に見る点、訴える前の手順の3つを解説します。

騒音の証拠集めをサポートします|LINEでの無料相談・騒音計の貸し出し・調査報告書の作成

騒音の基準値は、行政が定めた「目安の数字」として知っておきましょう

騒音と振動の数値を表示する計測器

騒音については、行政が定めている基準値を目安として知っておくことが重要です。私共のもとにも「測ってみたら60デシベルありました。これは訴えられますか」というご相談がよく届きます。その数字が大きいのか小さいのかを判断するには、比べる対象となる基準が必要です。

基準を知っておくと、自分の感覚がおかしいわけではないと客観的に確認できます。ここでは、国の基準と自治体の基準を順に見ていきます。

国の環境基準は、地域の類型ごとに数値が異なります

青空の下に建つマンション

国が定めているのが「環境基準」です。これは環境基本法という法律にもとづき、「このくらいの静かさが保たれているのが望ましい」という目標を定めたものです。この基準は全国一律ではなく、住んでいる地域によって数値が変わります。地域は大きく4つの類型に分けられています。

最も厳しいのが「AA類型」です。病院や福祉施設が集まっているような、特に静かさが求められる地域があてはまります。ここでは昼間50デシベル以下、夜間40デシベル以下とされています。

次に「A類型」と「B類型」があります。A類型は一戸建てや低層マンションが並ぶ閑静な住宅街、B類型は住宅が中心で店舗なども少し混ざっている地域です。この2つは、どちらも昼間55デシベル以下、夜間45デシベル以下と定められています。

残る「C類型」は、住宅と商業施設や工場などが混在している地域です。基準は少しゆるやかになり、昼間60デシベル以下、夜間50デシベル以下です。なお、ここでいう昼間は朝6時から夜10時まで、夜間は夜10時から翌朝6時までを指します。

つまり、同じ55デシベルの音でも、閑静な住宅街であれば昼間の基準の上限にあたります。一方、商業地が混ざった地域であれば基準の範囲内です。あなたの住んでいる場所がどの類型にあたるかによって、目安そのものが変わってきます。

ご自宅の地域がどの類型にあたるかは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で「用途地域」を確認すると目安が分かります。用途地域とは、住宅向け、商業向けといった土地の使い方の区分のことです。

自治体が独自の基準を定めている場合もあります

国の基準とは別に、独自のルールを定めている自治体もあります。たとえば東京都では、「環境確保条例」という条例で、日常生活の騒音について基準値を定めています。この基準値は、地域や時間帯ごとに細かく分けられています。

基準値を超えても、それだけで違法になるわけではありません

相談に応じる弁護士

ここで注意していただきたいことがあります。基準値を超えたからといって、それだけで相手が「違法」になるわけではないという点です。特に国の環境基準は、「こうあることが望ましい」という行政の目標として定められています。

数字はあくまで判断材料の一つです。それだけで白黒がつくものではありません。それでは裁判所は何を見て判断しているのかを、次の章で説明します。

何デシベルで訴えられるかに一本の線はなく、裁判所は「受忍限度」で判断します

騒音に思い悩む女性

裁判所は、計測した数値だけでなく、さまざまな事情を総合的に考えて判断します。「何デシベルを超えたら訴えることができるのか、その数字を早く知りたい」と思う方は多く、そのお気持ちはよく分かります。しかし法的には、「〇デシベルを超えたら違法」という一本の線は引かれていません。

裁判所が見ているのは、「受忍限度」を超えているかどうかです。受忍限度とは、「社会生活を送るうえで、普通の人なら我慢すべき範囲」のことをいいます。過去の判例では、この範囲を超えているかどうかを、次の6つの観点から総合的に判断するとされています。言葉は少し難しいのですが、大事な部分なので一つずつ見ていきましょう。

観点1. 侵害行為の態様(どのような音なのか)

電子ピアノの鍵盤

最初に見られるのは、どのような音なのかという点です。子どもが走り回る足音なのか、夜中の洗濯機なのか、大音量の音楽なのかによって評価は変わります。音の種類や、その出し方が判断の対象になります。

観点2. 侵害の程度(音の大きさと頻度)

夜中の物音で眠れない女性

どのくらいの大きさの音が、どのくらいの頻度で聞こえているかも見られます。デシベルの数字が関わってくるのは、この部分です。

観点3. 被侵害利益の性質と内容(何が損なわれているのか)

上の階の物音に悩み、頭を抱える女性

その音によって、あなたの生活の何が損なわれているのかという点です。眠れない、体調を崩した、在宅の仕事に集中できないといった事情があてはまります。どのような被害を受けているかが、具体的に見られます。

観点4. 地域環境(どのような場所なのか)

夕暮れの集合住宅

静かな住宅街なのか、繁華街の近くなのかという点も考慮されます。先ほど説明した、地域ごとの環境基準の違いにもつながる部分です。

観点5. 侵害行為の開始とその後の継続の経過および状況(いつから、どのくらい続いているのか)

手帳に記録をとる女性

その音がいつから始まり、どのくらいの期間続いているのかという点です。数日で終わった音と、何ヶ月も毎晩続いている音とでは、重みがまったく異なります。

観点6. 被害の防止に関する措置の有無、その内容や効果(相手が対策をしたのか)

リビングで話し合う夫婦

相手が音を減らすために、何か対策をしたのかどうかも見られます。防音マットを敷いた、夜は音を出さないように気をつけているといった行動がその例です。被害を防ぐための努力があったのか、なかったのかが判断の材料になります。

このように並べると、デシベルの数字が関わるのは6つのうちの1つにすぎないことが分かります。同じ50デシベルでも、昼間に一度だけ聞こえた音と、毎晩深夜に何ヶ月も続く音とでは、意味がまったく違うということです。

実際にあった裁判例

実際の裁判でどのように判断されたのか、マンションの上下階トラブルの例を1つ紹介します。平成24年3月15日の東京地方裁判所の判決です。

東京都品川区の分譲マンションで、真上の部屋に住む幼稚園児のお子さんが、飛び跳ねたり走り回ったりしていました。その音に悩まされたご夫婦が、上の階の住人を訴えた事案です。ご夫婦は管理人にも相談しましたが、状況は改善されませんでした。そこで専門業者に依頼して騒音を測定したうえで、裁判に踏み切っています。

裁判所は、受忍限度を超えていると判断しました。ただし、その理由はデシベルの数字だけではありません。音の大きさに加えて、子どもの飛び跳ねによる床への衝撃音であったことが考慮されています。夜の静かに過ごすべき時間帯にも、相当の頻度で音が出ていました。

さらに、音が約2年にわたって続いていたこと、奥さまが体調を崩して通院していたことも事情として挙げられています。上の階の住人には、子どもの音を下の階に届かせないよう配慮する義務がありました。それを怠ったことも含め、こうした事情が総合的に見られたのです。

結果として、音を出さないよう求める差止めが認められました。あわせて、ご夫婦それぞれに慰謝料30万円が認められています。慰謝料とは、精神的な苦痛に対して支払われるお金のことです。奥さまの治療費と、専門業者に支払った測定費用約64万円も損害として認められました。

この裁判の決め手は、数字だけではありませんでした。どのような音が、いつ、どれだけの期間続き、どのような被害が出て、相手がどこまで配慮していたかという全体が見られたといえます。

デシベルの数字と一緒に、経過の記録を残しましょう

ノートに騒音の記録をつける女性

だからこそ大切なのが、数字以外の事情も記録として残しておくことです。デシベルの数字と一緒に、「いつ、どのくらいの時間、どんな音が続いたか」を書き留めてください。「いつ、誰に申し入れをして、相手がどう対応したか」も、同じように残しておきましょう。

騒音の証拠集めをサポートします|LINEでの無料相談・騒音計の貸し出し・調査報告書の作成

いきなり訴えるのではなく、管理会社や管理組合への相談から段階的に進めましょう

相談窓口で担当者と話す夫婦

騒音トラブルでは、いきなり裁判を起こすのではなく、管理会社や管理組合に計測した数値データを持っていくことから始めてください。判例があるのなら訴えてしまおうと考えた方もいるかもしれません。しかし、裁判には時間もお金もかかるため、負担の小さいところから動くのが正解です。

裁判には年単位の時間と、費用倒れのリスクがあります

騒音の裁判は、訴えてから判決が出るまで、年単位の時間がかかることも珍しくありません。その間はずっと、訴えた相手と同じ建物で暮らすことになります。精神的な負担が続くことは、あらかじめ考えておく必要があります。

お金の面でも負担は小さくありません。弁護士に依頼すれば、依頼時に支払う着手金だけで10万円以上かかることが多く、そこに報酬金や日当などが加わります。一方で、勝っても慰謝料は数十万円程度というケースが多くあります。得られる金額より費用のほうが大きくなる「費用倒れ」のリスクが、かなり高いということです。

感覚ではなく、数値のデータを持って相談しましょう

窓口で担当者に相談する女性

賃貸にお住まいの方は、管理会社や大家さんに相談してください。分譲マンションの方は、管理組合や理事会が相談先になります。ここで大切なのが、「うるさい」という感覚ではなく、定量的なデータを持っていくことです。

たとえば「夜11時以降に、50デシベルを超える衝撃音が、この2週間で9回ありました」と伝えられると、相手の受け止め方は大きく変わります。管理会社や管理組合も、具体的な数字があれば、騒音を出している相手に対して動く根拠ができるためです。

申し入れをした事実そのものが、後の大きな材料になります

マンションの掲示板

もう一つ大切な点があります。管理会社や管理組合に申し入れをしたという事実そのものが、後になって大きな意味を持つということです。先ほど説明したとおり、裁判所は「相手がどう対応したか」を重く見ます。

もし最終的に裁判になったとしても、「きちんと申し入れたのに、相手が改善しなかった」という記録は、あなたにとって大きな材料になります。段階を踏むことは遠回りに見えますが、後の手続きの備えにもなるといえます。

まずは数日間、騒音計で発生状況を記録しましょう

最初に取り組んでいただきたいのは、数日間、騒音の発生状況を騒音計で記録することです。そのデータを持って、管理会社や管理組合に相談してください。

それでも改善しない場合は、内容証明、調停、裁判と、段階を踏んで進めていきましょう。内容証明とは、いつ、どのような内容の文書を送ったかを証明してもらえる郵便のことです。調停は、裁判所で第三者を交えて話し合う手続きを指します。

スマホアプリの数値やメモ書きだけでは、記録として通用しにくいことに注意してください

記録を残すときに、必ず注意していただきたいことがあります。きちんとした機械で測り、きちんとした形でまとめることです。そうでなければ、せっかくの記録も意味がなくなってしまいます。

手軽なのはスマホのアプリですが、スマホのマイクは、もともと人の声を拾うために作られています。低い音や衝撃音を正確に測るのは苦手で、機種によって数値が大きくずれることもあります。「アプリで60デシベル出た」と伝えても、相手からアプリの正確さを疑われてしまえば、話はそこで止まってしまいます。

まとめ方についても同じことがいえます。メモ帳に「今日もうるさかった、60デシベル」と書き溜めただけでは、いつ、どのくらいの時間、どんな音だったのかが第三者には伝わりません。

必要なのは、測定した日時、時間帯、音の大きさ、音の種類が整理された形になっていることです。そこまでそろって初めて、管理会社や管理組合も「これは対応しなければならない」と判断できます。

騒音の証拠集めをサポートします|LINEでの無料相談・騒音計の貸し出し・調査報告書の作成

騒音は何デシベルで訴えられるかよりも、数字と経過の記録をそろえて段階的に動くことが大切です

明るい部屋でくつろぐ女性

騒音は何デシベルで訴えられるのかという問いに、法律上の明確な答えはありません。国の環境基準や自治体の条例の数値は、あくまで目安です。裁判所は、音の種類、大きさと頻度、被害の内容、地域、続いた期間、相手の対応といった事情を総合して、受忍限度を超えているかどうかを判断します。

そのため、デシベルの数字だけでなく、音が続いた経過や申し入れの経緯を記録しておくことが欠かせません。裁判は時間も費用もかかるため、まずは騒音計で測ったデータを持って、管理会社や管理組合に相談することから始めましょう。それでも改善しないときに、内容証明、調停、裁判へと順に進めていきます。

数字と記録がそろえば、あなたの訴えは感覚ではなく客観的な事実として伝わります。今日からできる記録を、一つずつ積み重ねていきましょう。

©2026 騒音対策センター All Rights Reserved.